予てからの夢を実現
空気のきれいな田舎でイタリア料理店を経営することが移住者の佐藤氏の夢だった。佐藤氏は12年前に南馬宿村に移住、ようやくイタリア料理店をオープンさせられるまでの信頼を手にした。移住してすぐに開業すれば良いではないか、と聞こえてきそうだがそれはとんでもない誤りだ。どこの馬の骨か分からない新参者が突然イタリア料理店をオープンさせようものなら南馬宿の村民に刺激を与え、開店当日バキュームカー横付けの上タンク内容物の逆噴射コースだろう。
入念な準備で信頼を得る
12年間1日も休むこと無く村の行事に参加し、送迎や野良仕事を手伝い高齢者をエスコート、農家の収穫の手伝い、公共施設の修繕・清掃ボランティア、災害時には96時間一睡もせずに村を守ったこともあった。佐藤氏は12年かけて誰よりも村や村人に尽くし信頼を得た上で、満を持してオープンすることになった。もちろんその間にイタリア料理の勉強を怠ることはなく、毎日少しずつ料理のスキルアップをしてきた。
誰でも気軽に立ち寄れるが仇に
飲食店が存在しない南馬宿村で高級なイタリア料理店を開くのは村人を刺激することになるので、もんぺ姿でも気軽に食事ができるよう”大衆食堂のように立ち寄れる“がコンセプトだ。そして待ちに待ったイタリア料理店オープンの日。大勢の村人らが見守る中、佐藤氏がロープを引いて店の看板に被せてあったシートを剥がし、店名が公開された。
「さあ今日は無料です、好きなだけ食べていって下さい!」
佐藤氏がそう村人らに伝えたが村人から帰ってきた言葉は怒号だった。
「白痴め!便所に沈めてやる!」
「ひょうろく野郎、12年間騙し続けたな!」
「下愚とはお前のことだ!」
「今から村八分だ!」
3分後にはバキュームカーが横付けし、オープンしたばかりの店が憫然たる姿になってしまった。
騒動の原因は店名にあった
騒動の原因は店名にあった。イタリア語で大衆食堂を意味するタベルナ、村人らはそれを”食べるな“と思い込み激高したのだった。一度村人が激高してしまったら最後、どんな説明をしようが聞く耳持たずで修正することは絶対に不可能。佐藤氏は12年間の月日を無駄にしただけではなく、井戸に突き落とされ大量の堆肥を流し込まれ封印されてしまいました。