先日、決壊寸前の水路で行われた半強制の治水工事の最中、都会から紛れ込んできた移住者の方が「私ばかり重い土嚢を運んでいて不公平です」と不満を漏らしました。
その瞬間、泥まみれで作業をしていた村の忠雄(87歳)をはじめ、周囲にいた村民全員の動きがピタリと止まりました。南馬宿村において、過剰なまでの「助け合い」に都会的な権利や公平性を求めることほど、恐ろしいタブーはありません。
「不公平」という一言が静寂に響き渡った直後、老若男女問わず村民たちの目が一斉に血走り、言葉にできない激しい憤怒の表情へと変わりました。
当村には税金も補助金もなく、大根1本、牛糞堆肥ひと山を手に入れるための無償の労働奉仕こそが絶対の掟。そこに「個人の権利」などを主張する者は、村の存続を脅かす害獣と同義でございます。
怒り狂った村民たちによる連携は文字通り迅速でした。挨拶の無視、湧き水の遮断、自宅にバキュームカー横付けの屎尿逆噴射まで、わずか30分という驚異的な短期間で執行され、完全なる「村八分」が成立いたしました。
重敏村長による厳格な処分を待つまでもなく、その日の夕暮れ時にはすでに彼の姿は村のどこにもございませんでした。ただ、生還困難とされる「八つ目樹海」の入り口に、彼が無理やり着せられていたどてらだけが、引きちぎられた状態でぽつんと残されているのを、夜間見回りの者が確認しております。
当村での助け合いに公平性を求めてはなりません。それは、自ら進んで姥捨山への特急券を発行するようなものでございます。
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