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コンピューターを持ち込むべからず

先日、都会から当村へやってきた移住者の若者が、あろうことか「ノートパソコン」なる薄暗い板状のコンピューターを村の広場へ持ち込み、熱心に指を動かしていました。画面に映し出される無数の英数字と不気味な光は、三つ目山の不穏な鳴動や、八つ目樹海の謎の生物の徘徊と同じくらい、南馬宿村にとっては不吉な災いの予兆でしかありません。そもそも、電柱も上下水道も存在せず、各家庭の肥溜めから湧き出るメタンガスと豊富な湧き水だけで奇跡的に維持されている当村において、そのような文明の利器は何の役にも立たないのです。

この光景を目撃した村長・重敏は、「指先だけで楽をしようとする傲慢な精神が、村の助け合いの和を乱す」と一喝。即座に生活改善指導が執行されました。さらに、あろうことか持ち物検査をした際に英字のトレーナーも発見されました。この度重なる不心得に村人の怒りは頂点に達し、まず、その薄っぺらな機械は労働を怠けるための呪物として没収され、牛糞堆肥の切り返し作業の際に堆肥を平らに均すための頑丈なヘラへと再利用されることになりました。もちろん、若者自身には代々受け継がれてきた煤けたドテラと、膝の抜けたモンペが強制支給され、仕上げとして顔面には墨汁がたっぷりと塗りたくられました。これで彼も、文字通り「南馬宿村の風景」へと同化し、村八分という最悪の結末を数日間だけ先延ばしにすることに成功いたしました。

南馬宿村において、清潔すぎる衣服や理解不能な電子機器は、周囲に対して「私は今日、一切の泥臭い無償労働をしておりません」と宣言するに等しい罪深い行為です。村で生き残るためには、コンピューターのキーボードを叩く暇があるなら、隣の畑の牛糞堆肥を10回切り返したような汚れを全身に刻まなければなりません。

なお、この事件を受けて、翌朝のAM4:30にはボリューム変更不可の同報無線が100デシベルの大音量で鳴り響き、「村内にコンピューターを持ち込むべからず。見つけ次第、バキュームカーによる屎尿逆噴射の刑に処す」という重敏村長の独り言が村全域に放送されました。郷に従うのではなく、郷に染まり、過酷な自給自足の労働に身を捧げることこそが、無子高齢化の極限を進む当村で生きるための唯一の知恵なのです。

 

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日本政府に忘れられた唯一の村、南馬宿村。良く言えば自然豊かな環境で人間味溢れる村人たち。悪く言えば江戸時代以下の文明レベルと感情をむき出しにする村民。そんな村八分に移住しませんか?

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