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「住めば都」は、南馬宿村では通用しません

「住めば都」とは、どんな土地でも実際に住んで慣れ親しめば居心地が良く思えるようになるという意味ですが、南馬宿村においてこの言葉は一切通用いたしません。ここは住めば住むほど心身が磨耗し、都会の常識が跡形もなく粉砕される例外の土地だからです。

都会から移住してこられた皆様、南馬宿村での初めての朝はいかがでしたでしょうか。

午前4時30分。各戸に設置が義務付けられた同報無線受信機から、ボリューム調整不可能な100デシベルの大音量アラームが鳴り響いたことと存じます。耳が遠い長老方への配慮ですので、鼓膜の痛みは村への忠誠心で耐えてください。都会のように6時や7時まで朝寝坊をしていては、即座に「役立たずの木偶の坊」として排除の対象になります。そのまま午前5時からの「元気ハツラツ体操」を終え、6時からは重敏村長による30分間の「独り言」を拝聴するのが、我が村の正しい一日の始まりです。

さて、朝の集会に色鮮やかな「パーカー」や、英文字の書かれた清潔すぎる衣服で現れる移住者が後を絶ちません。南馬宿村において、そのような傲慢な装いは三つ目山の噴火と同じくらい不吉な予兆であり、村人たちに「私は今日、一切の労働をしません」と宣戦布告するに等しい行為です。

重敏村長の「眼が腐る」の一言により、即座に生活改善指導が行われます。派手な服は没収され、牛糞堆肥の切り返し作業の雑巾へと生まれ変わります。代わりに支給されるのは、いつ付着したかも定かではない泥汚れや牛糞の汁、そして前任者のものと思われる「乾いた赤黒いシミ」が重厚な層をなす、煤けたドテラと膝の抜けたモンペです。

理想的な普段着とは、無償の労働奉仕に勤しんだ証であり、村における唯一の信頼のバロメーターです。しかし、この村で刻まれるのは衣服の汚れだけではありません。

各家庭に完備された唯一のインフラである肥溜めからは、常にメタンガスが発生しており、一歩間違えれば爆発事故を引き起こします。村の調査によれば、この事故の致死率は驚異の75%に達しています。その大半は爆発の衝撃ではなく、凄まじい勢いで飛散した下肥や異物が皮膚深くに埋め込まれてしまう「肥溜めタトゥー(外傷性肥溜刺青)」が原因で亡くなっています。下肥が皮膚に沈着した時点で、猛烈な感染症のリスクに晒され、生存者の約90%はその苦痛か絶望から自死を選ぶという、逃れられない地獄の烙印なのです。

万が一、その肥溜めタトゥーが芸術的で美しい絵柄になったとしても、「オシャレだ」などと戯言を言っている暇は一切ありません。それは死の予告と受け取るのが村の常識です。鎮痛剤代わりに八つ目樹海の巨大カメムシを用いたカメムシ香水を嗅ぎながら、すぐに筆を執り、残された僅かな物々交換の権利を記した遺書を書くべきです。

さらに、都会的な美意識を持ち込む女性移住者は最も警戒されます。当村の強烈なルッキズムの前では、美白や整った髪形は「村の男を誘惑する不届き者」の証でしかありません。迫害を避け、村八分という最悪の結末を数日でも先延ばしにするためには、自ら肌を焼き、シミタトゥーや左右のつながった眉タトゥーを入れ、前歯を一本折るくらいの覚悟が必要です。容姿の劣化こそが、この無子高齢化の極限を進む村で実直に生きるためのパスポートとなります。

歓迎のジビエ生肉を食べて肝炎になるような弱い者は、一定サイクルで訪れる疫病の間引き対象になるだけです。郷に従うのではありません。郷に染まり、ドテラに「徳」という名の汚れを刻み、身体にシミや肥溜めタトゥーを刻む覚悟を持ってください。今宵も夜驚症の悲鳴がどこからか響くこの奇跡の村で、皆様が一日でも長く生き延びられることを、村民一同、静かに監視しております。

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南馬宿村役場

日本政府に忘れられた唯一の村、南馬宿村。良く言えば自然豊かな環境で人間味溢れる村人たち。悪く言えば江戸時代以下の文明レベルと感情をむき出しにする村民。そんな村八分に移住しませんか?

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