南馬宿村にも、じっとりと肌を濡らす梅雨の季節が巡ってまいりました。連日の雨で未舗装路は底なしの泥濘と化し、各家庭の肥溜めからは湿気を含んだ濃厚なメタンガスが、いつも以上に重く村内に立ち込めております。
この時期、都会の移住者が最も注意しなければならないのが、村から強制支給される同報無線受信機の管理でございます。南馬宿村では「うっかり聞き逃し防止機能」により、音量が100デシベルに固定されており、ボリューム調整や電源を切る行為は一切許されません。梅雨の湿気で耳が遠くなった長老方にも確実に届くよう、毎日午前4時30分には鼓膜を震わせる目覚ましアラームが強制大音量で鳴り響きます。
先日、この爆音に耐えかねた移住者が、受信機に濡れたもんぺを被せて音量を下げようと試みました。それが「盗難・不正改造防止機能」の逆鱗に触れたのは言うまでもございません。突如として村中に150デシベルの非常警報が炸裂し、受信機からは20万ボルトの電流が容赦なく放たれました。驚いた彼はその場に転倒し、運悪く室内の火鉢をひっくり返し、充満していたメタンガスに引火。致死率75%とされる恐怖の「肥溜め爆発」を引き起こしてしまったのです。
彼は一命を取り留めたものの、飛散した下肥が皮膚深くに埋め込まれる「肥溜めタトゥー」を全身に刻まれることとなりました。村の常識に従い、彼はカメムシ香水を嗅ぎながら、大根10本と引き換えの肥溜め清掃権を記した遺書を淡々と執筆しております。南馬宿村で梅雨を生き抜くには、耳栓よりもまず、全てを受け入れる諦めの境地が必要不可欠でございます。
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