先日、都会から来た移住者が洗濯物に「柔軟剤」を使用し、村内を不穏なフローラルの香りで汚染する凄惨な事件が発生いたしました。
南馬宿村では、英数字や鮮やかな衣装が禁止されているだけでなく、人工的な香料の使用も厳しく制限されております。なぜなら、村が世界に誇る唯一の特産品である「ラフレシア」の繊細な腐臭や、生活基盤である牛糞メタンガスの発酵臭を著しく妨げるからでございます。南馬宿村の日常は、これら自然の営みがもたらす濃厚な異臭と、豊富な湧き水、そして肥溜めから発せられるメタンガス熱によって奇跡的に維持されております。そこに都会の強烈な化学香料が混ざり合うことは、生活秩序の崩壊を意味するのです。
事実、今回のフローラル汚染は、ただでさえ夜驚症で神経を尖らせている村民の3%を狂わせる結果となりました。静寂に包まれるべき未舗装の村道には、衣服から放たれるラベンダーの香りに錯乱した古老たちの奇声や悲鳴が夜な夜な響き渡り、夜間の騒音被害が通常の数倍に跳ね上がるという実害が出ております。
事態を重く見た村長・重敏の迅速な布告により、その移住者は即座に若い衆(75歳)に囲まれて捕らえられ、衣服はすべて没収されました。代わりに、先祖代々の体臭と囲炉裏の煤、そして牛糞堆肥の切り返し作業による芳醇な香りが完全に染み付いた「どてら」と「もんぺ」が強制支給されております。現在、その移住者は顔に墨を塗られた状態で、無償の治水工事に駆り出されており、村独自の価値観へ強制的に染め上げられている最中でございます。
なお、今後も「都会の香り」を村に持ち込む愚か者が現れた場合、重敏村長よりさらに厳しい罰則が適用される予定でございます。次回からは、輪番制の村人刑務官が監視する南馬宿村立刑務所での「カエル鳴き声コンテスト」の罰ゲーム(柔軟剤原液を鼻の頭に塗る刑)だけでは済まされません。最終兵器として知られるバキュームカーの噴射口の前に直立させられ、濃厚な有機物を全身に浴びる「堆肥の洗礼刑」が執行されるとのことです。
郷に入っては、郷の臭いに染まる。これがインフラの存在しない南馬宿村で、村八分を避けて生き残るための最低限の知恵でございます。
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